雪竹医院
小児科/内科/アレルギー科/皮膚科/リハビリテーション科
インフルエンザ
インフルエンザは早くからの予防、診断、治療がカギです
最近、インフルエンザが原因の脳症にかかって命を落としたり、その後遺症が一生残ったりというような恐い話を聞くことが多くなりました。その反面、インフルエンザの診断と治療に関するここ数年の進歩には、目を張るものがあります。
また、特効薬として多量に使用されたタミフルで異常行動や精神症状が出現し、その使用には慎重にならざるを得ません。
インフルエンザの恐さを知ると同時に、その診断と治療について最新情報を得て、インフルエンザに対処しましょう。
インフルエンザとは
患者の咳やくしゃみの中にいるインフルエンザウイルスが、まず、鼻やのどの粘膜につき、そこで増えます(鼻炎、咽頭炎)。
そして、気管支や肺の方まで広がっていき(気管支炎、肺炎)、さらに、咳やくしゃみで他の人に飛び移っていきます(伝染)。
インフルエンザウイルスは、鼻やのどで増えるとすぐに全身の強い症状をひき起すため、潜伏期は短く、1~3日です。主に、Aソ連型、A香港型、B型が毎年少しずつ形を変化させながら、冬場にはやります。
インフルエンザの症状
普通のカゼは、2~3日鼻水や咳が出たり、のどが痛んだ後、38℃くらいの熱が出るのが一般的です。ところが、インフルエンザは突然何の前ぶれもなく、39℃以上の高い熱が出ることが多いのです。
体全体がだるく、筋肉や関節が痛み、頭痛、腹痛、下痢、吐き気などを伴うことが多いことも特徴です。鼻水、咳などのカゼ症状は、少し遅れて始まります。いったん熱が下がっても、また発熱する、いわゆる2峰性の発熱もまれではありません。
症状の程度や長さは個人の年齢や体力、免疫力によって差があり、かかっても症状の出ない不顕性感染もあります。すなわち、子どもや老人では一般に症状が重く、予防接種を受けていたり、母親からの免疫が残っていたり、過去に感染していると症状は軽くなります。
一般に、A型インフルエンザではB型に比べて重症になります。
インフルエンザの診断
数年前までは、流行状況と症状から診断するしかありませんでした。
血液の抗体検査やウイルス分離は高価で時間がかかるため、
実際の治療には役立ちません。最近、鼻やのどの浸出液で使って、数分でA型あるいはB型のインフルエンザを診断できるようになりました。しかし、この方法でもしばしば正しく診断できないことがあります。
やはり、周囲の流行状況や症状を考慮して判断することもやはり大切です。
インフルエンザの治療
A型にもB型にも効く新薬として、タミフルやリレンザ(吸入薬)も出てきましたが異常行動や精神症状などの重大な副作用が判ってきました。
これらの薬を使用する場合は十分な説明を受け、慎重に対応する必要があります。また、症状がでてから二日以上過ぎていれば、効果も少なくなります。
まずは、安静を保ち、脱水にならないように水分の補給をして、自然に回復するのを待つのが最良の治療でしょう。だいたい一週間くらいで治りますが、長引く場合は中耳炎、肺炎などの細菌感染を合併することがあります。高熱が続く間は脱水にならないように、水分を十分補給してください。
咳、鼻水止め、下痢、吐き気止めなどの対症療法が有効なこともあります。熱さましの種類によっては脳症を起こす率が高くなるのでといわれています。使用する場合は、安全だといわれているアセタミノフェンが無難です。
学校伝染病であり、解熱後2日を経過するまで登校(園)できません。
インフルエンザの予防
積極的な方法は予防接種です。抗体ができるまで、少なくとも2週間はかかるため、できるだけインフルエンザが流行する前の11月中に予防接種を受けましょう。
有効率は約80%といわれています。接種部分が時々腫れることがある以外は、ほとんど副作用はありませんが、卵アレルギーのある人は注意が必要です。
13歳以下の子どもの場合は、1~4週間あけて2回接種すると、予防効果はより確実となります。
また、インフルエンザ流行期には極力人ごみを避け、体調を整えてからだの抵抗力を高めておくことが大切です。
脳症の発症に注意
脳症には3歳以下の乳幼児がかかることが多く、その致命率は極めて高く約3割で、毎年100人以上の子どもが死亡しています。
痙攣や意識障害(ぐったりして呼んでも目を覚まさなくなる)、麻痺などに注意してください。情動や行動の異常が前兆として認められることもあります。
脳症はA型、特に香港型に多く、ウイルスが直接脳の中に入るのではなく、ウイルスに対する体の異常な反応によると考えられています。
インフルエンザ発症から、脳症の発症まで1~2日と比較的早いのが特徴です。
また、最近、解熱剤の使用と脳症の関係があることがわかり、特に注意が必要です。